ペット法務

ペットとの豊かな時間を過ごすために


 安心してペットの犬猫と暮らすためにペットの飼い主が行わなくてはならないことは、法律に定められています。ここではペットの飼い主が行う手続きを説明します。

ペットの登録

 現制度ではペットの犬や猫へのマイクロチップの装着・登録が動物愛護管理法によってブリーダーやペットショップに義務付けられているため、ブリーダーやペットショップから犬や猫を購入した飼い主は、所有者の変更登録をして所有者の情報を自分の情報に変更します。この変更登録は、環境省所管の登録機関に対してオンラインで行うことができます。知人や動物愛護団体から犬や猫を譲り受けた場合もマイクロチップの装着と登録が推奨されています。マイクロチップ未装着の犬や猫を譲り受けた場合にはご近所の動物病院にご相談ください。
 登録を終えると「登録証明書」が交付されますので大切にこの証明書を保管してください。もし、飼っている犬や猫を新しい飼い主に譲渡する場合、この登録証明書をペットと共に新しい飼い主に渡すことになります。


犬の登録と狂犬病予防接種

 狂犬病予防法では犬の所有者にその犬が住んでいる市区町村の市区町村長への犬の登録申請が義務付けられています。令和6年4月の時点において目黒区を除く東京23区では上のマイクロチップ情報の変更登録により自動的に犬の登録申請が区長に申請されるようになっています。東京22区に限らず多くの自治体でそのような仕組みが整っていますのでお住まいの自治体に確認してみてください。知人から犬を譲り受けた等の理由でマイクロチップ未装着の犬についてはこれまで通り市区町村の役所での登録が必要です。マイクロチップ未装着で市区町村の登録を受けた犬には鑑札が交付されます。マイクロチップを装着した犬ではマイクロチップが鑑札の代わりです。


 毎年一回の狂犬病の予防接種は犬の飼い主の義務です。犬用の施設の中には狂犬病予防接種を受けていることを利用条件としている場所もあります。例えば、東京都が管理する公園のドッグランを利用するには狂犬病予防接種済票の提示が登録に必要です。狂犬病は致死率ほぼ100%の病気です。きちんと予防接種を受けさせましょう。


ペットの咬傷事故

 もしペットが人を咬んで怪我をさせてしまった場合、飼い主はどうしたらよいのでしょうか。怪我をさせてしまった人に謝ったり、お見舞いをしたりということ以外にも飼い主にはやることがあります。以下にその手順を説明します。

飼い主が取る対応
  • STEP
    事故発生届出書の提出

    咬傷事故を起こしたペットの飼主は、事故発生から24時間以内に「事故発生届出書」を住所地の保健所又は動物愛護管理センターに提出します。

  • STEP
    1回目の狂犬病検査

    咬傷事故発生から48時間以内にペットを民間の動物病院に連れてゆき、ペットが狂犬病の保因者であるか否かの検診を受けさせます。

  • STEP
    2回目の狂犬病検査

    1回目の検査から2週間後に2回目の狂犬病検査をペットに受けさせます。もし咬傷事故を起こしたペットが未登録のペットであった場合、1回目の検査から1週間後と2週間後に2回目及び3回目の検査をペットに受けさせます。

  • STEP
    検診証明書の提出

    ペットが狂犬病に罹患していないという結果が出たら獣医師から検診証明書を取得し、これを住所地の保健所又は動物愛護管理センターに提出します。


 事故発生届出書には被害者の住所氏名、及び電話番号を分かる範囲で記載します。被害者からできるだけ情報を手に入れてください。この他にも、必要があれば咬まれた人を病院に連れていくことも大切です。

被害者が取る対応

 咬まれた被害者は、「事故被害届出書」を住所地管轄の保健所又は動物愛護管理センターに提出します。事故被害届出書には加害したペットの飼い主の住所氏名、及び電話番号、並びにそのペットの種類生年月日年齢性別呼び名、及び毛色を分かる範囲で記載します。飼い主からできるだけ情報を聞き出してください。


 被害者が裁判で加害ペットの飼い主に責任を問う場合は行政書士がお手伝いできることはありませんが、調停による和解を目指すのであれば行政書士がお手伝いできることがあります。調停をお考えの方は行政書士会ADRセンターのご利用をご検討ください。東京都行政書士会ADRセンターとその利用についてはこちらのページをご覧ください。

ペットの死亡届

 悲しいことですが、ペットの犬猫に寿命が来て死んでしまった場合、そのペットの飼い主はペット死亡から30日以内に死亡の届出をしなくてはなりません。ペットの購入時にマイクロチップの登録をしていればこの死亡の届出もオンラインで行うことができます。マイクロチップ未装着の犬については、鑑札を市区町村の役所に提出して死亡の届出を行います。亡くなったペットの遺体を自治体に引き取ってもらいたい場合、連絡が別途必要です。ただし、自治体にお願いした場合にはお骨が返ってきませんので、ペット霊園等にお骨を安置するには民間事業者にお願いすることが必要です。

ペットへの相続

 自分が亡くなった後のペットの世話について心配している飼い主さんもいらっしゃることと思います。飼い主がペットを世話してくれる人(世話人)と契約を結び、世話人にお金を支払う代わりに飼い主の死後にペットの世話をしてもらう方法があります。この契約の方法としては遺贈、贈与契約、及び信託契約が挙げられます。当事務所は、贈与契約の締結をお勧めします。


ペットに財産を遺すための贈与契約

 この贈与契約の目的は、世話人への金銭の贈与と引き換えに、飼い主の死後に遺されるペットが亡くなるまで、又は新しい飼い主が見つかるまでそのペットの世話を確実にすることにあります。このように贈与者が、受贈者に対して財産を贈与するのと引き換えに、受贈者に一定の負担や義務を負わせる契約を負担付き贈与契約といい、財産の贈与が贈与者の死亡を原因として生じる契約を特に負担付き死因贈与契約といいます。負担付き死因贈与契約には次のような特徴があります。

  • 飼い主が元気なうちに世話人と契約を結ぶことができる
  • 死因贈与契約の効力は、飼い主が死亡したときに生じる
  • 死因贈与契約の契約書を公証役場で公正証書化することで飼い主の死後の契約を巡るトラブルを回避できる


 飼い主が、ペットの世話と世話人への謝礼について死因贈与契約で定め、その他の遺産の分配を遺言で決めることもできます。その場合には死因贈与契約と遺言の内容が互いに抵触しないように整理することが必要になります。


 死因贈与契約と遺言の両方を用意する場合では、死因贈与契約の執行者(死因贈与執行者)と遺言執行者を同一人物にしておくと、死因贈与契約と遺言の両方がスムーズに執行されることになります。


 贈与契約についてはこちらのページもご覧ください。